無給研究員と失業給付

無給研究員の身分にありながら失業給付が受けられるのか、というご質問をいただいた。残念ながら、私は無給研究員を選ばなかったので、その答えはわからない。私は当初から書いているように、アカデミックなポジション、それ以外の研究・専門職、そして起業まであらゆる選択肢を考慮に入れていた。当面はアカデミックなポジションを中心に目指すが、3ヶ月を目処に見切りを付けることも決めていた。幸運にして、失業して間もなく内定を得たにすぎない。

無給研究員だからこうだ、というよりは、その活動が実際にどのようなものであるかが問われるので、ケースバイケースではないだろうか。個別の事例については、ハローワークの職員に相談して欲しい。私がそうしたように、失業前であっても相談はできる。本来あってはならないことだが、レアケースであるため、同じ事例であっても、説明の仕方や担当する職員によっては回答が異なるということもありうる。このブログの記事をもとに、「こういうやつもいる」とハローワークの職員に食ってかかるのはお止め願いたい。あくまで個別の事例ごとの判断で、このブログは参考程度に考えていただきたい。ただ、オーバードクター問題が深刻化している今、このような問題についてはきちんと整備していただきたい、というのが私の本音だ。

この業界では、研究を続けることは求職活動の一環であって、研究に専念とまではいかなくても、継続することは認めてほしいというのは、読者の皆様も私も共通の思いではないだろうか。任期が切れたら、失業給付の受給権を放棄して研究を続けるか、アカデミックなポジションをすっぱり諦めるかの二者択一を迫られるのではあんまりだ。何のために雇用保険を払ってきたのか分からない。だが、失業給付を受けながら就職が困難な職業に拘り続けることが許されるのか、という問題もあって、簡単に答えは出ない。自宅で紙と鉛筆とパソコンがあれば研究できて、履歴書を埋めるためだけ、論文に所属を入れるためだけに無給研究員の身分が欲しいという人と、大規模な実験設備を必要としていて、そこに毎日通うという人とでは、他の雇用保険被保険者の方からの見え方も違って、理解を得られないかもしれない。現行制度では、各ハローワークの長の判断に委ねるしかないのだ。

ここで適当なことを書いても読者の皆様にご迷惑をかけることになるだろうし、私としても失業給付の不正受給を教唆しているなどと言いがかりをつけられるのは心外だ。また、私自身のことを細かく書いて、おかしいじゃないかと横槍が入るのも困るので、ブログ上の表現は少しぼかしたものになってしまう。私はハローワークの職員に過不足なく説明しているつもりで、その結果として問題なしという回答をもらっているが、「説明が足りないじゃないか」という“後出しじゃんけん”が、ハローワーク側には許される制度になっているので油断できない。

この話題は、これくらいにしたい。

失業43日目:一日遅れの失業認定

失業認定を受けるため、ハローワークへ向かう。最大の懸案事項は、内定の結果、失業給付がどうなるのかだ。着任までは収入はないのだから、給付が止められるのは困る。かと言って、内定した事実を隠して失業給付を受け続けるのは、間違いなく不正受給である。

何はともあれ、失業認定申告書を作成する。求職活動の実績として、面接を受けたこと、その結果として内定が出たことを記入する。そして、ハローワークからの仕事の斡旋については“今後とも応じられる”という意思表示をした。まだ内定だから取り消されることもある、という想定である。この業界の内定は、あまり信用できるものではないらしい。“教授の鶴の一声で内定取消し”という噂もある。そうは言っても、今から新たな公募に出すのか、と言われると困ってしまう。内定が出ているのに、指導教官に「もう一通推薦状を書いてくれ」とも頼みにくい。

失業認定の応対に出たハローワークの職員に、状況を説明する。内定は出たが、着任までは数ヶ月以上もあること。今後、就任承諾書などの書類を大学に提出したりすると思うが、それはどのような扱いになるのか。着任までの間、どうしたらいいのか、と率直に尋ねてみる。ハローワークの職員も困ってしまって、上司に相談に行っている。大学教員に内定しました、などという人がハローワークに来るはずもなく、対応に苦慮する職員に同情する。5分ほど待たされた後、次のような回答をもらった。

着任までの間、失業状態であることに変わりはない。短期の仕事を含めて就労を禁ずるという趣旨の契約を大学との間で交わすようなことがなく、引き続き、ハローワークで短期の仕事などを探してもらえるなら、失業給付は受給できる。

大学と誓約書を提出したり、労働に関する契約を取り交わすことについては、何ら問題はない。ハローワークとしては、求職活動を行ったかどうか、就労したかどうかの2点だけを申告して欲しい。

相談したら心配は吹き飛んだ。もちろん、“着任までの間、他の仕事はしません”などという契約を交わしたりしない。従って、着任まで、生活の保障は続くようだ。

今回の認定期間中に得た収入の申告もしないといけない。「面接のための旅費を大学から支給されたが、申告する必要があるか」と聞いたところ、「ない」とのこと。そんなやりとりがあって、失業認定は終わった。

失業認定の後、早速短期の仕事を探してみた。短期となると“就業地がどこでもよい”という訳にはいかない。どうせ赴任旅費は出ないのだから、引っ越したりすると足が出てしまうので、実家の近辺でないと困る。だが、ここは地方の寂れ行く中堅都市、私が希望するような仕事は見つからない。やはり厳しいようだ。

失業42日目:失業認定日

ここ数日で、内定通知の書類と、もう一つの大学から、お祈りの手紙を受け取った。

今日は失業給付の認定日。だが、数日前に祖母が亡くなり、今日は告別式がある。だからハローワークには行けない。このような場合は、事前にハローワークへ連絡して新しい認定日の指定をしてもらい、その日に葬儀の会葬者への礼状のはがきを持参した上で手続きを行えばいいらしい。葬儀の日付が入っていないのだが、かまわないとのこと。

今日、祖母は火葬され、骨になってしまった。失業して実家にいたからこそ、祖母の死を看取ることもできた。祖母の息があるうちに、大学教員に内定したと伝えることもできた。いい冥土の土産になっただろう。祖母よ、安らかに眠れ。

合掌。

失業38日目:解禁

内定から一夜明けて、お世話になった先生方から、おめでとうのメールの返事を受け取る。

失業して以来絶っていた酒を解禁した。夜には、小学校以来の友人たちに会い「実は失業していて、こっちに戻っている」と打ち明ける。そして「大学の先生になるんだ」と内定が出ていることも言い、乾杯する。久しぶりの酒はうまい。「蓮舫に仕分けられた」などと話を振って反応が鈍いが、着任先の大学の所在地は実家の隣県であるためか、「連休になったら遊びに行くからな」「どこに観光に行こうか」という話に花が咲く。私の知らない、最近できた地元のおいしいお店なども教えてもらえた。少し気が早いが、懐かしい面々に大学教員就任を祝ってもらうのは、やはりうれしい。

内定が出ていると、失業していても恥ずかしくはない。いや、失業しているのが恥ずかしいという価値観がおかしいのだが、やはり気が楽だ。

失業37日目:内定

夕方、携帯電話が鳴る。先日と同じ番号だ。意を決して電話に出ると、内定の通知だった。正式な内定通知の文書は後日送付するとのこと。お礼を申し上げて、電話を切る。あまりに遅いので、最初の候補者に着任を断られたのかと思ったが、単に教授会が今日まで開催されなかっただけのようだ。

任期はあるが、一度更新されればテニュアのポジションである。定年退職する先生の欠員を埋めるための人事で、更新される可能性も高い。

内定が出たことを両親に伝える。とりあえず、一安心だ。当初の見通しの空手形は、本物になった。推薦状を貰ったり、今度に備えてサポートを依頼していた先生方にもメールで内定を伝える。

今日から着任までは、まだ数ヶ月以上の時間があるが、それまでの間の失業給付はどうなるのだろうか。一抹の不安が残る。ハローワークからもらった資料を読んでもよく分からない。それでも、心配事の大半は片付いたのだから、どうなろうと大した問題ではない。

失業32日目:不安

面接から一週間が経過した。まだ連絡はなく、段々不安になってくる。別の大学に出した、書類選考の結果もまだ届いていない。

今後の公募スケジュールを見て、どこに出そうか検討する。片っ端から出すという方針の方もいるようだが、私はそうする気にはなれない。どう考えても時間とお金を浪費するだけで、うまくいかないだろう。むしろ、先方の大学が何を望んでいるかを慎重に見極めて、自分とマッチするかどうかを考えた方が得策だ。

そういう意味では、先週面接に行った大学は、公募要項を読んだときも先方のニーズとマッチしていると思ったし、実際に大学に行ったときも、キャンパスの雰囲気などが私に合っていると思った。任期についてもそうだ。任期は設定されているが、更新されたらテニュアというのは決して悪くない。もう一つの書類選考中の大学は任期なしだが、これはそもそもあやしい。明文化された任期がないだけで、着任後、教授から「5年くらいで他のところへ出て行くように」と言われた人を何人か知っている。どちらを選ぶかと言えば、任期あり更新後テニュアの方だ。はっきり条件を明記してくれる方が信用できる。

向こう一ヶ月の公募を見ると、あまり私とマッチしていそうなものがない。唯一マッチしていると思ったものが東北地方のとある私大だが、要求している学位は修士だし、偏差値を調べると文系なのに40を下回っている。どう考えてもヤバそうな案件にしか見えない。つてを辿ってこの私大の関係者に様子を聞いてみるが、不安を打ち消すような情報は得られなかった。

こんなに私にマッチする案件は、今回のものが最後のチャンスのように思えてならない。内定ならば、おそらく電話で通知が来るのだろう。今日も電話は鳴らなかった。

失業25日目:面接試験

今日は面接試験の日だ。スーツを着込んで大学へ赴く。模擬授業と面接を合わせて2時間の長丁場。面接の途中からお腹が痛くなって、終了後、しばらく駅のベンチに横になっていた。何となく失敗したかな、という感じもする。